風が、吹いた


普通にいけば、彼女は自分の家に釣り合う男性と結婚し、今頃はセレブな生活を送っていても、おかしくないのだ。



つまり、異端児だった。




『私は、やりたいことは、自分で決めたいんですよね。』




鼻息を荒くしては、彼女はよくこう言っていた。



ふふ、と笑みを溢すと、目の前の加賀美が怪訝な顔して、私を見つめてくる。




「ごめんごめん。加賀美はお嬢様なのに、しっかりしてるなぁって考えてたら、いつもの口癖思い出して笑っちゃった」




謝ると、彼女は頬を膨らませた。




「お嬢様って言わないでくださいよ。自分のやりたいことをする。当たり前のことじゃないですか」




そう言うと、コーヒーを啜った。