風が、吹いた





「まぁまぁ、待てって。俺が悪かったから。冗談だよ」




出口の方へと向いた肩を掴まれた。




「…ほら、あれだろ。それってつまり…」




ゴホンと、咳払いしつつ、彼に向き直って乾いた視線を送る私から目を逸らす。



「王子を好きなままの気持ちで、他の奴と一緒になったシンデレラが、最後他の奴を好きになれるかってことだろ?」




何の反応も示さない私に、東海林は続けた。




「二心って、ことだよな?」




「…どういうことですか?」




「だって、シンデレラは王子を忘れられないわけだろ?」




「…はい、多分」




「それで、他の奴と一緒になるってことは、両方好きになるってことだろ?」




あぁ、と頷く私に、彼は腕を組んで、考え込むように俯いた。