風が、吹いた



そんなやりとりを知る由もない私は、脱いだ白衣を自分のロッカーに掛けた。


時計を確認してから、エレベータホールに向かう。


ボタンを押して暫く待っていると、下から上がってきたその箱が開いて、中から見知った子達がぞろぞろと出てきた。




「あ、お疲れ様でーす」




同じ研究室の学生達が口々に挨拶をして行く。


自分も同じように返して、空になったエレベーターに乗り込んだ。


壁にもたれかかって、これからの予定を頭の中で組み立てていると、ポケットに入れてある携帯が震えた。



振動時間が短いので、恐らくメールだろう。



手がふさがっているので、後で見ることにする。



一階に着くと、事務の方々に軽く挨拶をすませ、学校を後にした。



門を出たところで、タクシーを捕まえる。




「呉間化成までお願いします。」




行き先を告げてから、荷物を横に置き、携帯を開く。


途端、眉間に軽く皺が寄った。




「吉井、かぁ」




しかも、着信だった。