風が、吹いた


「じゃぁ、何が出来るって言うの?」




いけない、と頭の中に警告音が響くが、一度爆発させた思いは溢れ出して、戻すことができない。




「浅尾や、吉井が!ここに来てくれたら、私は楽になる?!先輩は戻ってくるの?!私は置いてかれて、ひとりになっただけ…それならそれで、元に戻るだけ。。もうすぐクラス替えもあるし?2人とも、さよならなんじゃない?」




喚くだけ喚いて、目の前に居る吉井と目を合わさないまま、横を通り過ぎる。



家の前にいる、浅尾の視線から逃げるように俯いて、




「…どいて」




と言った。





「…倉本」



浅尾はドアの前から、体を動かさないまま、私を呼ぶ。



「どいてって、言ってるでしょ…」



鍵穴を見つめながら、もう一度、呟く。




「どいて!」



諦めたような溜息をついて、浅尾がその大きな体を横にずらした。


すぐにガチャガチャと鍵を開けて中に入ると、後ろでバタンと閉める。


背中をドアに預けて、やるせない気持ちを落ち着かせるように、息を吐いた。