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テーブルの上に、雫がぱたり、ぱたり、と痕をつける。
自分のものだと気づくのに、少し時間がかかった。
これ以上膨らむことはないだろうと思うほど、大きくなってしまった想いが、さらに募って、佐伯さんの記憶の中に自分のそれを馳せてしまっていたからだ。
「…結局は、僕のせいで、千晶を傷つけてしまったね。」
話し終えた佐伯さんは、肩を落とした。
「いや、孝一くんのことも、かな。」
そう言うと、おもむろに立ち上がって、傍にあった空っぽの本棚を、見つめた。
「きっと、彼は、もう、戻ってこない」
それは、今の私にとって、刑の宣告のように、重い言葉だった。


