風が、吹いた


「え。もしかして…」




そう言うと、彼はゆっくり、信じられないというように、頷いた。





「ねぇ…これって、偶然かな?」





内心驚いている僕が、茶目っ気たっぷりに言ってみる。






「君の、わがまま。もう少し、通しちゃっても、罰はあたらないんじゃないかな。」






だって、今まで、どれほど、目の前の少年は何かを我慢してきたんだろう。


何を抱えているのかは、知らないけれど、それでもタイムリミットがあるという彼の時間が、



少しくらい、彼の願うままにいったって、誰も彼を責められないだろう?




秋が、そろそろ冬と戯れるようになる頃。



風が、乾く頃。




夕焼けがきれいに見える頃。



心の中で、願った。



一瞬でもいいから、彼の見る空も、黄金に輝きますようにと。