「同じ学校の子、僕のお店で働いてるんだよ」
へー、と興味なさげに相槌するもんだから、苦笑してしまう。
「シフトが日曜以外だから、会ったことないよね?」
「別に、会いたくもないんで」
こちらに目も向けない彼に、以前、『外ではかなり強烈に線を引いてるんです。』と言っていたことを思い出した。
「知ってる子かもしれないよ?」
もう少し、いじってみたくなって、そう言うが。
「知らないと思います。俺、滅多に人の名前覚えないし。」
冷たく返されてしまった。
仕方ない、諦めるか。
やれやれ、というように、肩を竦ませてから、独り言のように言った。
「ま、そーかもね。まだ1年生だし、きっと孝一くんは知らないよね。」
彼の動きが少し鈍くなったことに、僕は気づかない。
「倉本千晶っていうんだけど。良い子なんだけど、この子も中々人を寄せ付けないオーラがあってねぇ…」
書類の他の部分に、目を落としながら、そこまで言ったところでー
「どうしたの?孝一君…」
さっきまで、そっぽを向いていた彼が、呆然としながら、僕を見ていることにやっと気づいた。


