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引渡しの日。
彼の持ち物は、本と衣服、自転車、くらいで、あとは何もなかった。
「物、少ないんだね」
ちょっと驚きながら、感想を言うと、彼は軽く笑ってー
「これで、十分です。」
と言った。
「あ、そうだ、これ。」
思い出したように、そういうと、彼がダンボールの中から、ごそごそとクリアファイルを取り出した。
「お願いします。」
受け取ったそれは、今回の手続きの際、記入してもらうように手渡した書類だった。
「あれ…」
紙面に目を通しながら、あることに思い当たり、呟く。
「孝一君、宮一高校なの?」
そうですよ、といいながら、本棚に本を移している。
ここらへんの公立では、一番の優秀な学校だな。
―それから。


