風が、吹いた




「どうしたの?さっき、来たのに。」



カウンターから出て、彼に尋ねる。




「その…ちょっと…お願いしたい事があって…」




とりあえず、椅子に座るように促した。




「ゆっくり聞くから。コーヒー奢るよ」




思いつめたような、思春期の少年特有の憂いを帯びた表情に、自分の経験談でも話すことになるのかな、と考えると、自信がなくなる。


いつもしている動作で、心を落ち着けよう。




僕が個人的に好きな、グァテマラを選び、2人分のカップを用意する。



「…すみません…」



謝る彼は、項垂れている。


一体、何をお願いされるというのだろう。


暫く元気のない彼の様子を観察していたが、お湯の沸く音で、我に返った。



「…はい、どうぞ」



テーブルに、淹れたばかりのコーヒーを置いて、声を掛ける。


彼は顔を上げると、もう一度、軽く頭を下げた。