風が、吹いた


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雨の音が、する。



薄く目を開けると、部屋の中が暗くて、生憎の天気だということがわかった。




「折角、卒業式なのに…」



昨夜も寝付けなかったのに、朝から、また椎名先輩のことを思い出して、顔を赤くさせる。




「こんな顔してたら、絶対吉井に馬鹿にされちゃう」



冷たい水で、顔を洗って、制服に着替えた。



今日は3年生の登校は、少し遅い。



反対に、私たちは早く行って、式の準備を手伝わないといけない。



「おはよー。くらもっちゃん、バスで来たの?」




教室へ行くと、欠伸を噛み殺しながら、吉井が声を掛けてきた。




「うん。仕方ないよね」




机に空に近い鞄を置く。




「あ、浅尾、おはよー」




一瞬体を固くしてしまう。



「…はよ」




「お、おはよう」




この間、告白されてから、ぎくしゃくとした空気が、恐らく私から一方的に漂っている。



絶対吉井は嗅ぎ付けている筈だが、知らん振りを決め込んでくれているようだった。