風が、吹いた


その場にへなへなと座り込んだ。



気づいていなかったとは言わない。



でも確信はしていなくて。


浅尾の気持ちを受け取ることは、できない。



だけど彼の言う「フェアじゃない」という言葉の意味がわからなかった。



すっかり太陽が雲に隠された、空。



力を増してきた、北風。




「…雨が、降るかな」




たった今目の前で起きた現実から逃れるように、ひとり、呟いた。