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「くらもっちゃん、試験、もうすぐじゃん。」
昼休みになると、前の席の吉井が話しかけてきた。
「あー、そうだね。今回はバイト休もうかな。結構範囲広いよね。」
試験勉強が結構ハードだった。
「倉本」
私のものでも、吉井のものでもない声に、2人して思わず顔を見合わせて、黙りこんだ。
「ちょっと、いい?」
後ろから聞こえる、不機嫌な声に、肩を縮ませる。
恐る恐る振り返ると、浅尾が立ち上がって、こちらを見下ろしていた。
吉井の、あちゃー、という声が聞こえた気がしないでもないが、とにかく私は慌てて立ち上がって、スタスタと教室を出て行ってしまった浅尾の後を追った。
「ちょ、、待ってよ…」
自分よりも高い背の人間は、歩幅も大きい。
せいぜい160位しかない私は、後を着いて行くだけで息を切らした。
そんな私の声なんてお構いなしに、どんどんと歩いていく浅尾の後をなんとか追っていくと、校舎の中庭で彼が突然立ち止まった。
全体的に薄暗い天気の中、そこだけ雲の隙間からの光が当たっていた。


