風が、吹いた







「くそっ」




浅尾の後ろ姿が見えなくなってから、すぐにずるずるとその場にしゃがみこんだ。



背中に壁を感じながら、天井を仰ぐ。



浅尾の言ってくる言葉は、いつも真っ直ぐで、扱いにくい奴だったなと、部活の頃を思い出した。




「譲りたくねー……」




コートについた、彼女の甘い香りが、ふわりと愛しい記憶をくすぐって、




無性に泣きたくなった。