風が、吹いた













本鈴が鳴り、誰も居なくなった昇降口。




「で、…なに?」




不機嫌さを隠そうともせずに、彼は目の前の後輩を睨んだ。




「あんまり時間ないんで、単刀直入に言います。倉本に大学のこと、話してないって本当ですか。」




「それがお前に関係あんの?」




悔しさから、浅尾は歯を食いしばる。




「…ありますよ。俺、倉本のことが好きです」




一瞬俯いた後、真正面から彼を見据えて浅尾は言った。






「知ってる」




それがどうした、と言わんばかりに、溜息をついた。



「俺、先生たちが話してるの、偶然きいちゃったんです。ごく一部しか、知らないらしいけど。先輩の行く大学って…」




「それ以上言うな。」




感情を殺したような目で言われ、言葉に詰まった。




「……っでも!倉本はどうなるんですか!?俺…あいつのこと傷つけたら、先輩のこと、許しませんよ。」




押し黙る彼に、追い討ちを掛けるように、宣言する。




「倉本のこと泣かしたら、俺がもらいますから。」