風が、吹いた


「あのね、千晶。お願いがあるんだけど」




椎名先輩が、軽く腕をほどいて、私の顔を覗きこむ。



「卒業式の前日の放課後、屋上に来てくれない?」




先輩の表情からは、何を考えているのか、私にはわからない。




「いいけど……」




戸惑いながら、私がそう言うと、彼は嬉しそうに微笑んで、もう一度、さっきよりも強く、私を抱き締めた。




「ありがとう」