風が、吹いた


駅へはあっという間に、本当にあっという間に着いた。



アインシュタインの相対性理論は正しい。



目的地を教えてくれない彼が、私の分の切符を買ってくれる。



駅は混雑していて、人の波にさらわれそうになる。



ついには抱きかかえられるようにして、改札まで連れて行かれた。



私たちが行く方向は乗客が少なくて、電車がホームに入ってきてからは、すんなりと席に座ることが出来た。



窓から見える景色は、冬がまだ長いことを告げている。




カタン、カタタタン



からっぽに近い電車の箱の中。



はじっこの席を、2人並んで座って、心地よい沈黙に身を任せた。



伸ばした左手が、ぎゅっと掴まれる。



あぁ、こんなあったかい時間もいいなぁなんて、能天気に私の頭は考える。


陽射しが、心地よい位に、車内に入ってきていて。