が。手が震える。
スーツを着た花婿と、控えめなドレスの花嫁が、仲良く奥に座り、友人たちと会話を弾ませている。
全体的に品のあるお酒の飲み方をしてきたらしい客ばかりなことから、良い式だったのは、一目瞭然だった。
それでも、今は心に余裕がない。
落ち着かなければ、と頭ではわかっているのに、身体が言うことを利かない。
コーヒーの数も、紅茶の数も把握できていたので、準備は整っている。
「千晶、コーヒー持っていって」
「はいっ」
まずは、佐伯さんの淹れたコーヒーを運んだ。
問題はその後だ。
「千晶、こっちも持っていって」
紅茶を淹れた椎名先輩が、カウンターから声を掛ける。
私は彼の顔を見ることができないまま、一瞬固まった。
「千晶?」
不思議そうに私を呼ぶ彼の声に、私は弾かれたように動き出し、差し出された紅茶をお盆に載せる。
「はははいっ」
「これもね」
最後のひとつを、先輩から受け取ろうと手を掛けると、先輩の指先と、私の指先が、少しだけ、触れた。
「!」
途端に手を引っ込める。
気づいたときには遅かった。
「熱っ」


