風が、吹いた


「椎名先輩、出てくれてたんですか?」




訊きながら、カウンターで話し込む私たちをよそに、黙々と紅茶の茶葉を選んでいる彼を見た。




「うん。あれ、言わなかったっけ?孝一君からも聞いてない?」




ぶんぶん、と首を振る。




「言ってないし聞いてないです。」




そうだったっけー?と、考え込む佐伯さん。




「千晶が休むって連絡くれたのも孝一君だし。息を切らしてきてくれてね。」




そうそう、と付け足す。




「あの日、自転車乗ってこなかったな。制服で来てたし。よっぽど慌ててたんだね。」




くすっと、笑いを溢した。