風が、吹いた


浅尾に続いて教室に入ると、にやけた顔の吉井が、机に頬杖をつきながらこちらを見ている。




私はそれを無視して通りすぎ、自分の机に鞄を置いた。




「おはよーくらもっちゃん」




吉井はいつもどんな私にも怯まず声を掛けてくる。今もその良い例だ。


こんなに話し掛けるなオーラ全開に出しているというのに。


「おはよ」




仕方なくちらりと一瞥して、席に座る。にやつく吉井の振ってくる話題は良かった試しがない。大体は面倒な筈だ。



「くらもっちゃん、浅尾と椎名先輩どっちにすんのかって女子たちの間で噂になってるよー」




声をやや潜めて、そう言うと、こちらの反応を待ってか、黙ってしまった。



ーなるほど、最近感じる女子達の冷たい視線はそのせいか。



といっても、元からひとりでいたせいか、気にもならず毎日を過ごしている。