風が、吹いた


その表情を見るだけで、胸が締め付けられるようだった。




「ごめんなさい。立ち入ったことを訊いてしまいました…」




無神経だったかと肩を落とした。




「いや、いいよ。ぜんぜん大したことじゃないし。千晶は?どうして一人暮らしなの?」



「……」


ー絶対、仕返しなような気がする。



これじゃ答えないと、私が悪い気がする。罠に嵌った感じ。しかも私は先輩のことがわかったようで、実は全然少しも理解できていない。



ー仕方ないか。




「親が…」




極力短く説明できるように言葉を探そうと、目が宙を彷徨う。




「私を捨てたから。」




そう。



短くまとめると、そうなのだ。