風が、吹いた


「千晶は履歴書見てるからねー。不思議に思うよね。」




やがて、先輩は観念したかのように、ふぅと溜息を吐く。




「確かに通ってはいたけどね。ちょっとやりたいことがあって、こっちに来たんだ。」




そういうと視線をカップに落とした。




「そうだったんですか。い、家出とかですか?」




しまった。訊きにくい話題すぎて緊張したせいか、声が上ずる。




「うーん、そうかもしれないし。そうでないかもしれない。」




曖昧な答え。私が首を傾げると。




「俺の居場所はわかるんだ。向こうには。目の届かないところになんていけやしない」




苦しそうに、笑った。