風が、吹いた







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昼休みになると、吉井の行っちゃうのー?という仕草を尻目に、私はいつものように、屋上の踊り場に向かおうとした。



吉井には大分慣れてきたが、あの4人グループの輪に入るのはごめんだ。

が。




「倉本」



教室を出たところで、浅尾に呼び止められる。




「さっきはごめんなー。先行っちゃって。」




ーいや、気にしてないし。




「お前って冷たいよなー」



声に出していないのに、私の表情から台詞を読み取ったらしい。


浅尾の口がへの字に曲がる。





「椎名先輩となんかあったの?」




面倒だなぁと思いながら、話の流れ上気になっていたことを訊くと、浅尾は、言い難そうに頭を掻いた。




「さっきも言ったように、サッカー部の先輩なんだけど…まぁ、ちょっとね。なんつーの。色々あるんだよ。でも…あんな顔するんだなぁ。いつも鬼のような顔しか知らなかったからなぁ。」




遠くを見るような、何かを思い出しているような表情で、浅尾が呟く。




「……あの先輩、そんなに怖いの?」




深く頷く浅尾。




「まじで、この世の中に鬼が存在するなら、ああいう人のことを言うんだな。」



それ、最早人間じゃないってことだろうか。




「あの人から、直接友達になろうって言われたの?それとも実は昔からの知り合いなの?」




本当に不思議だ、という表情で、浅尾が尋ねてくる。