確かに私が会った時、彼の笑顔は大体がにやりとしたものだったけれど。
それでも、彼の口から出てくる言葉は、どれも、冷徹という感じとはかけ離れていた。
「だからさー、くらもっちゃんがもしかして、先輩のこと見てるのかなって思ったとき、珍しいなって。でも知らないっていうから気のせいだったのかなーって考えてた矢先に、さっき話してるんだもん。友達って聞いて二度びっくりよ。」
けらけらと吉井は笑った。
「私もよくわからないけど、、バイト先が一緒だからじゃないのかな。」
考え込みながら、呟く。
「えっ。くらもっちゃん、バイトしてんの?えーどこどこ?行きたい!」
「…いや、こなくていいし、教えない。」
「けちー」
吉井の口がとんがった。
「椎名先輩は、バイト1個じゃないよ。相当入れてるよ。たぶんね。」
「え?でも今の店のシフト、、結構入ってるけど…」
「うーん、じゃ今だけなのかな。部活も才能があるから、目つけられて、嫌がる先輩を、できる時だけでいいからって、無理無理頼まれて渋々入ってたくらいで、ほとんどの時間をバイトに費やしてるって話だよ。ま、噂だけど。」
チャイムが鳴り、現国の先生が教室に入ってきたために、会話はそこで終了となった。
吉井は席をくっつけていようと思ったらしいが、先生に気づかれて注意され、渋々元の位置に戻った。
離れる際に、こっそり。
「また話聞かせてよ」
と耳打ちしていく。


