風が、吹いた


「その上、スポーツもできる。言うことなしだねー」



でも、と吉井が続ける。




「冷徹人間なのよ。特に女に。」




「―え?」




つい、心の中の声を漏らしてしまった。



でもにわかには信じ難い。


だって、少しも。



私の知っている彼は、冷たくない。冷たくなんか、ない。




「笑顔も、大体は、不機嫌そうな笑みっていうか、何の感情もないような表情しかしてないでしょ?」




「サッカーの時は笑ってたみたいだったけど。」




ふふっと吉井はしたり顔で笑って。



「やっぱり見てたんだね、あの時。」




と呟いた。



「えっ…と」



なんとなく気まずい気持ちになって視線が彷徨う。




「サッカーの時は別だよ。好きなんじゃないかな。だからギャラリーも多いけど。女の子たちに笑いかけたことなんて、一度もないよ。」