風が、吹いた


「さっきの紙にも書いたけど、今まで椎名先輩が女友達どころか、女と話している所すら、見たことがないの。多分この学校の誰もね。」




どう答えようかと考えあぐねていると、吉井が机に目線を落として話し出す。




「小中の知り合いもいなくて、高校の入学式から、あれはどこの誰だって大騒ぎになったって、先輩たちが話してるの、聞いたことあるんだ。なにせあの容姿で…」




そこまでで一旦言葉を切ると、吉井は顔を上げて、人差し指をピンと立たせて得意げに、




「入学試験、首席だったからね。」




と言った。