迷うわたしに気づいていないのか、その子はわたしの手を引いて奥へと進む。
「あたしは蛍と言うの。あなたは?」
「あ…香澄、です」
かわいい名前ね、と言われて思わず頬が緩んだ。
わたし、お母さん以外で褒めてもらうのなんていつぶりなんだろう…
「さぁ、どうぞ?」
「わあ…」
目の前に広がったのは明るい照明とその光を吸収して煌めく石たち。
すごい……とっても綺麗。
見惚れているわたしに蛍さんはクスリと笑って手招きをする。
それに誘われるように近づけば更に輝いて見えた。
「すごい」
思わず漏れてしまった言葉に慌てて口を塞ぐ。
でも蛍さんはニッコリと笑っていて。
「気に入ったのがあったら手に取って見てもいいよ」
「でも、」
もし壊したらと思うと怖くて触れる気がしない。
弁償するお金もないし……
「大丈夫。手に取るだけはタダだから」
笑う蛍さんにわたしもぎこちなく笑みを返した。


