腹黒どS王子

「安達さん、おはよ。」



ニコッ




「おはよう。何かある?」




「いや、挨拶しに来ただけだよ。」




「ふーん…あ、そ。珍しい…らしいね。それ。」




「え、どれ?」




「田口から挨拶すんの。別に興味ないけど。」




「興味ないって俺に?俺が誰かに挨拶する事に?」




「…どっちもかなぁ…でも、まぁ、そーだね…うん。田口は暇なんだろなぁーってよく思うよ?」



クスッ



あいつは意味ありげな微笑を浮かべた。




「暇じゃないよ?」




「へぇ。で、さっきから宮崎が呼んでる。とゆーか、呼びたそうに見てるよ。行ってあげな。」




「…うん。じゃあねまた!」



ニコッ




「うん。………何で最後に笑ったんだろ?」



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「そっかそっかー祐太郎の好きな人は安達さんなわけね」




「わかんねーよ。んなもん。」




「あの子だけなんだろ?挨拶しようとそんの。」




「それは…多分あいつとなら普通に話せるからだと思う。」




「どゆ意味?」




「慶太も話せばわかる。あいつは…あのケバいやつみてーに祐太郎とか慶太とか呼ぼうとしない。」




「それは…珍種だねぇ…他にもあるんだろ?」




「元々俺らにあんまり興味ないってよ。」




「へぇ…好きなのか」




「なんでそーなる?俺はただ…」




「あのぉ…」



俺の言葉を遮ってクラスの女子が話しかけてきた。
確かコイツの名前はえーと…



「どーかしたん?山本さん」


ナイスフォロー慶太!




「田口様ってぇ綾ちゃんのことぉ好きなんですかぁ?」



様って…それはそれで…




「どーなんだろーね。俺にも分からんわ。」



「私はっ宮崎様に聞いてるんじゃないわぁ!本当のことぉ田口様に…」




「俺も同じ答えだよ。自分の気持ちよくわかってないんだ。ごめんね。」




「あと…」


「「様付けもやめようか?」」




慶太もさすがに"様"はきつかったかw




「祐太郎、分かってんだろ?お前はみんなの王子だ。」




「…だからなんだよ。」




「自分の気持ち分かんないとか言うな。その言葉は肯定だとほとんどのヤツは思う。」




「それがなんだって……あ。」




「気付くのおせーよ。迷惑かかんのは安達さんだぞ!」




「ごめん…」




「分かったんなら俺はいい。だけど、ちゃんと自分の気持ちに向き合えよ。」




「あぁ。」




ほらな。やっぱり慶太はいいヤツだ。


慶太と喧嘩する日が…話さなくなる日々が来るなんて予想もしてなかった。

side end