とりあえず、ポケットに入れといて後でこっそり返そう。


俺は撮影中、休憩中、相賀さんが1人になるタイミングを終始狙っていた。

そして、その時がきた!
よし!今、今だ!

『あの〜、相賀さんちょっと!』

小声で呼び、手招きする。

あまり話したことのない俺に急に声を掛けられ、不思議そうな顔をしている。
ちょこちょこと近寄ってくる彼女を人気のない場所へ連れ出した。


『ここなら大丈夫だろ。急に呼び出してすみません。』

「いえ?どうしました?」

呑気に首を傾げて俺を見ている。
ちょっと、あなたやらかしてるよ!
そんな呑気な顔してる場合じゃないよ。

そんな彼女の目の前に、俺はポケットからすっと、免許証を差し出した。

『これ…今朝、拾っちゃ

「!!きゃーーーーーーーーーーー!!」

俺が言い終わる前に被せ気味で叫ぶ相賀さん。
さっきとは一変、青ざめた表情。
声デカイ!さすが女優っすね。

『こ、声が大きいですって!』

俺は耳に指を突っ込みながら言う。

「あ、あ、すみません!!あの……」


『すみません、見ました。』

言いたいことは大体わかるので、俺はさっさと白状した。


「だよね…。率直に感想をどうぞ。」

『意外とお姉さんなんですね。』

「はぁ…。そうなるよね。」

『でも誰にも言ってませんし、これからも言わないんで安心して下さい。』

「本当に!?そうしてくれると助かるよ〜。はぁ。」


自分の仕出かした大失態にそうとう落ち込んでいる。