でも、彼は話してくれた。



「……昨日ね、ある女性に会ったんだ。
俺、アイドル優等生とか嘘だよ。
デビューして間もない頃、31歳の女性と付き合ってた。今思うと犯罪だよね。

もう俺は、自分の知らない大人の世界を教えてくれるその人に完全に溺れてた。
でも、その人は俺のことを全然愛してなんかいなかったんだ。
その人はただ、未熟な男性アイドルを自分の手で育ていくのが好き。そういう人だった。
だから俺は1年後、売れ始めたら捨てられたんだ。」



『………。』



「その人に昨日、会っちゃって。
しかも、普通に話しかけてくるんだ。
ますます良い男になったね。って。

それでちょっと落ちてて。
急に羽純さんに会いたくなって、来ちゃった。」




桜雅くんは、悲しそうに笑った。







なんだか私は無性に彼のことが愛しくなって、強くギュッと抱きしめた。




「んー。落ち着くっ。」




そう言って、抱きしめ返してくれた。






そんなことがあって何でまた年上の私とこんな風に……。
なんて、疑問はある。

けど、寂しいとき悲しいときに私を頼ってくれたっていうことが嬉しくて
私は、もっともっと強く抱きしめた。