11階立てのマンションの5階に私の部屋がある。


分相応だと思ってはいない。


無理してでも住みたかった、ちっぽけな贅沢。


住人は薄汚れたスエット姿の裸足の女。


疲れ切った私。


入り口手前の監視カメラの前で足を止める。


暗証番号はあまり好きじゃない。


任意の数字で組み合わせた銀行のカードと同じ、4桁の数字の列び。


3756…。


何の考えなしに並べた数字…5桁の番号なら死んでるね。


淋しげな一人笑いと共に、内側から開く両開きのドア。


外出する親子連れ。


擦れ違いに私は中に入った。


いっぱいに膨らんだ子供用の浮輪に、なんで鈴が入っているのか、未だにわからない。


くぐもった音もかわいいとは言い難い。


小さな子供ですら、私の顔すら見ようとしない。


はしゃぐ声が親子の去ったエントランスにこだました。


私と関係ない家族なのに、子供の声に苛立ちを感じる。


ひとりでいる時間が長かったから。


うるさいだけじゃないのかも。