海から上がった私は、スエットの上下を硬く搾る。


海水が、どぼどぼと、焦げるように熱い砂地に吸い込まれていく。


素足には熱過ぎる砂地。


海に長く浸かり過ぎたのか、感覚が異常に鈍い。


ふやけたか?ふやけたのは私の中身か。


無くした物は…健康サンダルと1000円も入ってない小銭入れと、銀縁の眼鏡だけ。


後は何にもなかったはず…。


楽しそうにはしゃぐ子供たちの間を摺り抜け、出口に向かう私。


頭からずぶ濡れの私に誰も注意を向けない。


当たり前だ。


他人の目線で見たら、私は十分…変な人だ。


下手に関わって、逆恨みでもされたら大変よね。刺されちゃうかな。


砂浜を抜け、海沿いの県道を南へ進む。


ひたひたと焼けたコンクリートの地面を裸足のまま進む。


暑い…。


溶ける…。


とろける…。





たいして若くもないのに無茶するから。


高校を卒業してから10年が過ぎてる。


久々に泳いだからかな。


身体が重い。


まるで、二人分の肉を抱えて歩いているよう。




通り過ぎる人の群れは、誰もが無口なのに…。


散歩途中のトイプードルだけが私に関心を示す。


うるさいっちゅうの!