トリップ 3




ヤノウくんは、苦しそうに話してくれた。

その痛みは感じる。

でも、理解したというのも変だった。

私はその悲しみを知らないからだ。


「あの男は大切なものを全部奪ったんだ。でも母さんが復讐をしてはダメだって。本当の強さではないからって……。俺のこの炎の呪いも、あの村の人達と、母さんだけは受け入れてくれたんだ。」

ライブンで見た、あの青い炎と、紋章のことだろう。

ヤノウくんは、自分の手をぎゅっと握りしめた。


「本当は…復讐したい……」

絞り出た一言だった。


私もその気持ちは分かる。理由は違うけれど、今まで殴り、切りつけてきた人達を憎んでいる。


でも、一部だけれど、ヤノウくんがやってくれたから。

あの出会いの時に。


私は、ヤノウくんを黙って抱きしめた。


「ユ…ア……?」

「殺されて、殺し返すのはヤノウくんのお母さんが望んでません。私もヤノウくんにそんなことをしてほしくありません。…だから、殺さなくてもいい方法を考えませんか?」

「………。」

「ね?」

背中を優しく叩いた。


「……ごめん。ユア。」

「はい……?」

「ちょっとだけ、このままで。」

「ぁ……はい。」


ヤノウくんはそう言うと少し私に体を預けた。