ヤノウくんは、苦しそうに話してくれた。
その痛みは感じる。
でも、理解したというのも変だった。
私はその悲しみを知らないからだ。
「あの男は大切なものを全部奪ったんだ。でも母さんが復讐をしてはダメだって。本当の強さではないからって……。俺のこの炎の呪いも、あの村の人達と、母さんだけは受け入れてくれたんだ。」
ライブンで見た、あの青い炎と、紋章のことだろう。
ヤノウくんは、自分の手をぎゅっと握りしめた。
「本当は…復讐したい……」
絞り出た一言だった。
私もその気持ちは分かる。理由は違うけれど、今まで殴り、切りつけてきた人達を憎んでいる。
でも、一部だけれど、ヤノウくんがやってくれたから。
あの出会いの時に。
私は、ヤノウくんを黙って抱きしめた。
「ユ…ア……?」
「殺されて、殺し返すのはヤノウくんのお母さんが望んでません。私もヤノウくんにそんなことをしてほしくありません。…だから、殺さなくてもいい方法を考えませんか?」
「………。」
「ね?」
背中を優しく叩いた。
「……ごめん。ユア。」
「はい……?」
「ちょっとだけ、このままで。」
「ぁ……はい。」
ヤノウくんはそう言うと少し私に体を預けた。


