The Fool−修正版−

「少し、話をしましょう」


「………?」


「私達の世界ではですね」


構えを解かず、ウスナはもくもくと話す。


「普通の人間なんかいないのですよ」


姿知祈も構えを解かず、聞くしかなかった。


「みんな化け物です。能力が付与していない人間ですら化け物に近い存在なんです」


「近い………?」


「ええ、何かにとても優れています。食べ物は全てモンスター。それを狩るには人ならざる力をも必要とします。化け物じみた怪力だったり……ね」


目が暗い色になる。殺気が前より濃くなる。


「私達と同じ位の力を持つ、人間だけの団体がいます……一つの武器の扱いに長けた団体……完璧に扱う人を“隊長”と呼ぶ彼らはそれ故に周囲から“軍隊”と呼ばれます」


「………あんたらは………何なんだ……」


姿知祈はボソリと呟く。だが、ウスナは気にせず、続ける。


「………称号は“王”、故に付いたあだ名は“王国”………武器ではなく、能力、または攻撃方法を極めし者」


口の端を少し吊り上げる。


「結構いますよ?例えば、“風王”…これはヒューゴさんです。“拳王”はマルスくんで……」


「あんたは何なんだ?」


「私ですか?“王”という称号は本来、一つしか持ってないのですが、上位の……私達は二つあります」


「遊具を使う事から“遊王”………そしてもう一つは……“幸王”。遊び尽くす王にして幸せを操る王、それが私」


(幸せを……操る?)


「座敷童は知ってますよね?家に居ればその家は幸福に居なくなればその家は不幸になる、日本では妖怪の一種だといわれている運を司る神です」


ウスナの種族はまさに戦闘にしたら最強の部類に入る。


だから彼女は


清々しく笑う。


「うふふ…不幸ですね」