口の悪い、彼は。

 

「……はぁ。危ねぇ」

「ぶ、部長……っ」

「……くっ。夢中になりすぎだろ」

「!?」


私の頭は部長の胸の中に抱えられていて、部長の顔は見えない。

でも……。

い、今、部長笑ったよね?

笑う振動伝わってきたし!

すっごい見たいんだけど……!

今度こそ見損ねるわけにはいかない!と、私は慌てて部長の胸から離れる。

でもそこには笑顔はなく、私の目に映ったのは呆れ顔の、でもいつもよりは何となく柔らかい雰囲気を感じさせる表情をした部長だった。


「ほんと、目が離せねぇな。高橋は」


するりと部長の手が私の髪の毛をすくようにして頭を撫で、そのままその手は私の首筋に触れてきた。

ぞくりとするのと同時に身体が熱くなっていくの感じたけど、そのことを気付かれるのが恥ずかしくて、私は逃げるようにして咄嗟に口を開く。


「っ、部長……っ」

「あ?何だよ」

「や、だから、あの……っ」

「何」

「っ!」


真っ直ぐ私の目を見てくる部長から、私も目を離せなかった。

手を離して欲しいという気持ちは確かにあるけど、部長の手のぬくもりが心地よくて、離さないで欲しいという気持ちも生まれてしまって、私の頭の中でふたつの気持ちが喧嘩をし始めてしまう。