口の悪い、彼は。

 

「高橋」

「っ」


……ダメだ。逃げられない。

私は観念して、部長の表情を窺いながらこくりと頷いた。


「……はい。……知りたい、です」

「……ふぅん。あっそ」

「……?」


はぁと息をついて、部長は屈めていた上体を起こし、ベンチに背を預ける。

私も部長に合わせるように、俯いていた顔を無意識に上げていた。


「お前、喜多村と黒崎はいいのか?」

「……?喜多村さんと社長、ですか?」

「あいつらに言い寄られて、満更でもねぇって態度取ってたじゃねぇか。ベタベタ触られてニヤニヤしてただろ」

「……あの、満更って何のことですか?ただ話してただけだし、ニヤニヤもしてないし、何のことかさっぱりなんですけど……」


っていうか、言い寄られた覚えがまずないんだけど……。

喜多村さんは妹みたいに私を構ってくれているだけだし、社長は私が部長のことを好きだと知っていてあんな風に言っただけだろうし……。

私は部長の言葉に対して身に覚えがなくて、首を傾げる。


「つーか、喜多村とは付き合ってんじゃねぇのか?」

「……はいっ?」

「いつもベタベタしてるだろ」

「そんなのしてません!喜多村さんは、そう!お兄ちゃんみたいなもので!付き合うとかそんなのは全くありませんから!」


部長に誤解されるのが嫌で、私は思いっきり否定する。

というか、どこをどう見て、喜多村さんと私が付き合っているように見えるのだろうか。

完全に喜多村さんは私のことを妹としてしか接していないのに。