話しているうちに涙も止まり冷静になってきた私は喜多村さんから離れた。

喜多村さんは私の隣のデスクのチェアに座って、頷きながら私の話を聞いてくれていた。


「うーん、そんなことがあったんだな。でもさ、落としてもないのに壊れるっていうのがあまり考えられないと思うんだけど」

「……でも、壊れたと考えられるのはあの時だけだから……私のせいなんです」

「壊れたことは事実なんだろうけど、高橋が受け取った時点でそうなってた可能性は考えられないか?その辺りを企画部の人間にちゃんと調べてもらった方がいいよ。ひとりで確かめに行く勇気が出ないんなら、俺も一緒に行くから」

「……いえ。その可能性は低いと思いますけど……確かめるなら、ひとりで行きます。私の責任ですから。大丈夫です」


喜多村さんの提案に、私は膝の上でぐっと拳を握ってそう答える。

これは仕事なんだし自分の責任なんだから、自分のことは自分でしないといけない。

それに喜多村さんに話して、やっと落ち着くことができた気がするから。

それだけで十分助けられているんだから、ちゃんと向き合わないといけないと思った。

喜多村さんが帰った後に部長が戻ってこなかったら私も企画部に行ってみよう。

……大丈夫。ちゃんと責任を持とう。

そう決心した私は、キッと前を見据えた。


「……高橋、強くなったなー。俺、泣きそう~」

「!泣くって大げさな……。それに、強いなんてことないですよ。だって、こんな大きなミスしちゃうんですから。もう、最悪です」

「そういうところが強いんだって。ミスを認めて受け入れるのって、強くないとできないと思うよ?俺この仕事を何年もしてるけど、ミスした時にそれを受け入れて前に進むのは未だに勇気がいるし、なかなか決心できない」

「……そう、でしょうか……」


企画部に行くことが強さなのかはわからないけど、尊敬する先輩の喜多村さんにそう言ってもらえたことはすごく心強かった。


「頑張れ。高橋。応援してるから」

「……はい」


喜多村さんの笑顔に、私は頷いた。