口の悪い、彼は。

 

「っ!」


その瞬間、ドキン!と私の心臓が大きな音をたてたことは言うまでもなく。

部長の目線は私を向いたまま、離れようとしない。

そこにはつい勘違いしてしまうような空間が確かに存在していた。

ドキン、ドキン、と心臓が鼓動する。

漆黒の瞳は何でも吸い込んでしまうのではないかというくらい、強く私を惹き付ける。

今、あの瞳には私だけが映し出されているんだ。

あの宝玉のような綺麗な瞳に。

そう気付いた途端、急激に恥ずかしさが襲いかかってきた。

た、耐えられない……!

部長の瞳に映され続けるなんて、そんな大層なこと!

私は部長から慌てて目線をはずしたけど、次の瞬間には、今の目のそらし方はわざとらしかったかもしれない!という不安が襲いかかってきた。

私に目をそらされたからと言って部長が傷付くことなんてないとわかっているとは言え、上司相手に失礼なことをしたのではないだろうか。

一気に血の気が引いた。

このままじゃ悪い印象しか残らない。

せめて嫌われないようにはしなきゃ……!

私は不安な気持ちを抑え、とりあえずヤツを退治したことを部長に伝えて様子を窺ってみようと、大きく深呼吸をして喫煙室に向かって足を踏み出す。

いつも通りに振る舞うんだ!と気合いを入れて、ガチャっと扉を開けた。