「ちひ」
「結婚するか」
「!!」
耳元で低い声でそう囁かれ、胸が苦しいくらいにきゅうっと甘く締め付けられる。
今まで一度も千尋の口から出てくることがなかった“結婚”という言葉に、私は夢を見ているのかもしれないと思うのと同時に感動してしまって、言葉を出すことができない。
もしこれが夢だとしても、今千尋が言ってくれた言葉は紛れもなく“プロポーズ”なのだ。
結婚しなくても今のままで十分、なんて思っていたとは言え……やっぱり心の奥底ではずっとずっと憧れてやまなかった千尋からのプロポーズ。
たとえ夢だとしても……。
嬉しいって言いたいのに。
うんって頷きたいのに。
幸せだって伝えたいのに。
声が、出ない。
「……っ」
「したくねぇなら別にいいけど」
「っ!すすす、する!是非してくださいっ!」
千尋の取り下げの言葉に焦った私は、声を裏返らせて思わずがっついてしまった。
それと同時に、鼻の奥がつんと痛くなって涙が出そうになっていることに気付く。
……ねぇ、夢じゃないって思ってもいいの?
本当に千尋は私でいいの……?
「……くっ」
「!何で笑うの~」
「そんなに簡単に答えていいのか?」
「へ?」
「……了承したら最後。逃げたいと思っても逃げられねぇんだぞ」
「!」
意外すぎる千尋の問い掛けとその理由に、私はつい息をのんでしまった。
千尋は私が千尋から離れたいと思う日が来ると思ってるの?
逃げたいと思う日が来るって?
私のことを想って言ってくれた言葉なのかもしれないけど……そんなの、私の答えは決まってる。

