口の悪い、彼は。

 

「弟だ」

「へ?弟?」

「15離れた弟がいる。実家にいる頃はよく面倒見てたから、子どもには慣れてるんだ」

「め、面倒を見てた?千尋が?」

「何だ、その反応は」

「いや!変な意味……だけど」

「はぁ。ったく」

「だって、千尋が小さい子の面倒を見るなんて想像できないし、しかも弟さんがいるなんて初耳だし」


千尋からは家族の話とか出てこないし、私からもほとんど聞いたことはなかった。

家族の話はもっと踏み込んだところに入ってしまう気がして、何となくずっと聞けずにいるんだ。

千尋と15離れてるってことは……もしかしなくても、私の方が弟さんの年齢に近いってこと?

ってことは……?


「……千尋」

「あ?」

「私のこと、“妹がいたらこんな感じ”とか思ってない、よね?」

「そう思った方がいいのか?」

「やだ!絶対に嫌!」


ただでさえ千尋と釣り合うような“オトナの女”になれていないと思っているのに、千尋にまで“妹”扱いされたら“彼女”という立場でいられなくなる。

私は拒否するように頭をぶんぶんと横に振って、千尋にキッと視線を向ける。


「絶対に“妹”だなんて思わないでね!」

「お前次第だな」

「何それ!?じゃ、じゃあ、大人っぽくなるように頑張る!千尋も驚くくらいのオトナの女になってやるんだから!」


むん!と両手で拳を握って気合いを入れた瞬間、目に飛び込んできたのは千尋の気の抜けたような微笑。

それと同時に私の心臓はドキン!と跳ねた。