「何かしてほしい時以外は泣くなよ。うるせぇからな」
千尋のツンツン言葉に、意味なんてまだ理解できるはずはないけど、晴日ちゃんは応えるようにきゃっきゃと笑い始める。
「……」
「ちっ、千尋っ?」
「何だ」
「今どんな魔法使ったの!?」
「あ?こんなの簡単だろうが。うるせぇガキ泣き止ませるのなんて」
千尋の表情には笑みなんてものはこれっぽっちもないから、晴日ちゃんとのツーショットは微笑ましいなんて言葉にはならないけど、千尋が子どもの扱いにこんなに慣れているなんて意外だった。
しかも千尋は晴日ちゃんに好かれているようで、その証拠に晴日ちゃんは千尋に向かって口をパクパクとさせながら、笑顔を見せているのだ。
……喜多村さんでさえ引き出せなかった笑顔を。
千尋って子どもが苦手そうなのに……もしかして、好きだったりするのかな……?
笑顔はないけど、普段よりも表情がやわらかい気がするし……。
意外すぎる光景に驚きつつ、ふと千尋と晴日ちゃんから視線をずらすと、私の目に喜多村さんのショックを受けた表情が飛び込んできた。
「き、喜多村さん?大丈夫ですか?」
「あ、あぁ。別に、大丈夫だし!」
大丈夫と言う喜多村さんの表情は明らかにひきつっていて、どう見ても大丈夫そうではない。
……それはそうだ。
赤の他人に愛娘のかわいい笑顔を取られてしまったのだから。
ショックだよねぇ~……。
しかも、どこからどう見ても子どもには好かれなさそうなタイプの千尋だし……。
ドンマイです。喜多村さん。

