口の悪い、彼は。

 

「や~ほんと、晴日ちゃんかわいいよぉ~。ほっぺぷにぷに~」

「かわいいだろ、かわいいだろ~。なー、晴日っ」


喜多村さんがそう言いながら晴日ちゃんを抱き抱えなおす。

その瞬間、晴日ちゃんの様子が変わったことに私は気付いた。

さっきまで見せてくれていた笑顔が途端になくなったのだ。

あれれ。お姉ちゃんがいなくなって不安になっちゃったのかな?


「晴日ちゃーん?ママがいなくてさみしいの?」

「パパがいるから大丈夫だよなー?晴日っ」


満面の笑みを浮かべた喜多村さんは晴日ちゃんの身体を上下や左右にゆらゆらと揺らすけど、晴日ちゃんに笑顔は戻ってこない。

むしろ、どんどん曇っていくばかりだ。

うるうると瞳が潤みだす。


「き、喜多村さん!泣きそうですよっ」

「大丈夫だって!はーるひー。うりゃっ」


喜多村さんが外を向いていた晴日ちゃんのことを自分の方に向けて抱え直した時だった。


「ふ……、ふえ~っ」

「!!晴日っ?はるちゃーん?」


晴日ちゃんが声をあげて泣き出してしまって、私と喜多村さんはおろおろとしてしまう。

ど、どうしよう!

どうやったら晴日ちゃんは泣き止んでくれる!?

おろおろしつつも喜多村さんのことを見ると、喜多村さんもどうしたらいいのかわからないようで、泣いている晴日ちゃんを抱えたまま、その場で回ったり変顔を見せたりしているけど、晴日ちゃんは泣き止む気配はない。

っていうか、喜多村パパ、しっかりして~!

私は晴日ちゃんを泣き止ますものがないかと、辺りをキョロキョロと見回す。

目に入ってきたのは、晴日ちゃんのベッドの上にころんと転がっている音の鳴るネコのぬいぐるみ。

私はさっとそれを手に取り、晴日ちゃんの目の前にゆらゆらとかざした。