口の悪い、彼は。

 

ほっと胸を撫で下ろしていると、美都さんが首を傾げて私のことを見てくる。


「あ、もしかして小春ちゃんってば、妙な考えしたの?」

「へ?」

「私と千尋の間に何かあるって」

「!!や、あの……、前に部長が女の人と笑顔で腕を組んで歩いてて、それが美都さんだって聞いたことがあったんです。実は」

「……あぁ!あれね~あれは嫌がる千尋がおもしろくて、脅してやったの!」

「お、脅す……?」

「あいつね~平気なふりしてるけど、本当は虫が苦手なの!あっ、これもいいネタでしょ?バラされたくないなら笑顔でいろ、って言ったら簡単だったわよ~。腕を組んでたのはオプションね」

「……」


以前、ゴキブリ事件があった時のことが頭に浮かんだ。

……本当に苦手だったなんて。

それ以上に、笑顔と腕を組んでいた理由にホッとしている私がいる。


「っていうか、私と千尋が付き合ってる思ってたなんてね~。ないない!地球がひっくり返ってもないわよ~!私、あんな男を彼氏にするなんて嫌だもの!」

「……ははは」

「まぁでも、あんないつもツンツンしてるような“部長”の女の存在、気になるわよね~。どんな女が相手して、どんな女と付き合うんだって」

「っ!」


まさか自分が“ツンツン部長”と付き合っているとは言えず、言葉に詰まってしまう。

仕事の関係もあるし、美都さんには私が千尋と付き合っていることは言わない方がいいだろうけど。

言葉に詰まったことを誤魔化すように私はカラボールを掴もうとするけど、慌ててしまっている私はそれをころりとテーブルに転がしてしまった。


「あっ、ごめんなさいっ」

「小春ちゃん、もう酔っちゃった?もしかしてお酒弱い?」

「あ、いえ!まだまだいけますから!うまく掴めなかっただけです」


「食べ物転がしちゃうなんて、子どもみたいですね!」と私は笑い飛ばす。