サラダを小皿に盛りながら、私は美都さんの話を聞く。
「普通働き始めるとそんなに会う機会もなくなるものだけど、今も彼の下で千尋が働いてるから付き合いが続いてるってわけ」
「……」
美都さんがぽんと口にカラボールを放り投げて「やりっ。チーズだ!」とほくほく笑顔を浮かべたのを見ながら、私の頭の中に浮かんだ疑問を口に出す。
「あの……彼、って」
美都さんの言葉は、美都さんと千尋との関係が直接繋がっているというものではなく、間に“彼”という人物が挟まっているというものだ。
それが意味することを考えると、ほんの少しずつだけど私の中にある不安が薄くなっていく。
っていうか……“今も彼の下で働いている”って、どういうこと?
サラダを乗せた皿を美都さんに渡すと、「ありがとう」と受け取り、私の疑問に対してにこっと笑った。
「ふふっ。この前言えなかったことなんだけどね」
「!」
「私、“黒崎”って名前なのよ?結婚式の時の座席表には書いてあったから知ってくれてるかもしれないけど……今ならその意味がわかるかしら?」
……確かに座席表で“黒崎美都”という名前を見た覚えはあるけど、『美都さんがいる』と思っただけで、名字はあまり気にしていなかった。
……っていうか、“黒崎”ってどこかで……。
黒崎……、黒崎……?
「……黒崎……、って、えぇっ!?」
「ふふっ」
はっと頭に浮かんだのは、ある人物の顔だった。
それは、我が社のトップに立っている人物だ。
叫んだのと同時に、サラダをよそっていた小皿をつるりと落としてしまいそうになったけど、何とかこらえた。
落ち着いて小皿をテーブルの上に置く。

