口の悪い、彼は。

 

お姉ちゃんの目の前までたどり着き、近くで見ると、さらにその綺麗さが際立つ。


「お姉ちゃん、ほんと素敵!すっごく綺麗!」

「ありがとう、小春」

「あっ、喜多村さんもカッコいいですよっ」

「“ついで”感、ハンパねぇなー」

「そんなことないですよ~」


本当にお似合いのふたりで、今この瞬間も憧れの気持ちがさらに膨らんでいくのを感じる。

うっとりとお姉ちゃんのことを見ていたら、お姉ちゃんの視線が私の斜め上を向き、その口が開いた。


「?」

「あの、妹のこと、助けてくださってありがとうございます」

「っ!」


突然発されたお姉ちゃんの言葉に、私がその目線の方をはっと振り向くと、そこには私の横をちょうど通りすぎた千尋がいた。

千尋はお姉ちゃんの呼び掛けに歩みを止め、私の斜め後ろに立ち止まる。


「いえ。転ばなくて良かったです」


笑顔はないものの会社以外の人間が相手だからか、千尋はお姉ちゃんに向かって丁寧な言葉を発した。

普段は滅多に聞くことのない丁寧な言葉に、私の心臓が小さくドキッと跳ねる。

何か……お姉ちゃんと千尋がこうやって会話をするなんて、不思議な感じがする。

だって、自分の家族と自分の彼氏が会うなんてことはそうそうないし、あるとすれば“家族になる時”だろうと思っていたから。

……そんな夢みたいな日が来るなんて、今は想像することすらできないもん。

「では」と千尋が言った瞬間、お姉ちゃんが再び千尋のことを呼び止めた。


「あのっ」

「……はい?」

「……これからも小春のこと、末長くよろしくお願いします」

「!」


お姉ちゃんはそう言い、ぺこっと頭を軽く下げる。