口の悪い、彼は。

 

……そうなんだ。

千尋と付き合っていることは会社の人たちには秘密にしているのだ。

というか、お姉ちゃんや喜多村さんにさえ、言っていない。

私は別に言ってもいいと思っているんだけど、千尋が「仕事をする場でぐちゃぐちゃ言われるのはめんどくさい」と言うからみんなには黙っている。

確かに私たちの関係を言ってしまえば、ノリのいい営業部のみんなはやんやと盛り立ててくるだろう。

特に喜多村さんは私のことを本当の妹だと思ってくれているし、実際に今日からそうなるわけだから、一番に食いついてきそうだ。

そんな感じで平日の私たちは相変わらず部長と部下の関係で、連絡を取ることもほとんどないんだ。

私は今みたいにオンとオフの切り替えがあまりうまくないからそっちの方がボロは出なくていいんだろうけど、たまに寂しさを感じることもなくはない。

……でも、千尋のそばにいれるだけで私は何でも我慢できるから。

平日と同じようにしなきゃ、と私は千尋に向かってぺこりとお辞儀をする。


「部長、大変ご迷惑をお掛けしました。すみません」

「……」


顔を上げるのと同時に、お姉ちゃんの声が飛んでくる。


「小春っ、大丈夫?」

「あっ、うん!ごめんね~つい慌てちゃった!あははっ」

「もう。気を付けてね」


お姉ちゃんの心配そうな声にえへらと笑いかけ、私は改めて落ち着いてお姉ちゃんに向かって歩き出した。