口の悪い、彼は。

 

その時、披露宴会場の入り口に、お色直しを終えたお姉ちゃんと喜多村さんがスタンバイしている姿が見えた。


「あっ!お姉ちゃん!」


千尋からお姉ちゃんへとロックオンを変更させた私は、お姉ちゃんに向かってブンブンと手を大きく振り、その方向に向かって足を踏み出す。


「え、小春?」

「と、部長も?」


私と千尋の姿を認めたお姉ちゃんと喜多村さんはキョトンとした表情をしている。

喜多村さんはきっと、何で私と千尋が一緒にいるのか、不思議に思ったのだろう。

でも私はそれに構わず、早く早く、と気持ちが先走り、お姉ちゃんに歩み寄るスピードを上げる。


「すごく綺麗~!って、わ!」

「きゃっ、小春!」


気を付けていたはずなのに、テンションが上がってしまった私は自分の足元が高いヒールだということを一瞬にして忘れ去ってしまい、やわらかい絨毯にヒールを取られてしまった。

ぐらりと揺らいだ視界に、こける!と目を咄嗟につぶる。

でも……私の身体は床に叩きつけられることはなく、大好きな匂いにふわりと包まれた。


「!」

「……はぁ。転けんなつっただろ。ったく、ほんと世話の焼ける女」


こける前に私の身体をしっかりと支えてくれたのは、すぐ近くにいた千尋の力強い腕だった。

ぐいっと身体全体を引き寄せられ、私はその安心できる胸に寄りかかる。

すぐ近くから落ちてきた低音の声に、私はほぅと息をついて、すがるようにしてその腕に掴まった。


「ご、ごめんね……ちひ」

「おい」

「あっ!すすすみません……!部長!」


ついいつものように千尋の名前を呼びそうになると、千尋の声がそれを制した。

はっと我に返った私はガバッと千尋から離れた。