「……ほんと、ズルいですよね」
「あ?何が」
「別にっ、何でもないです!」
首を傾げて私を見てくる千尋から、私はぷいっと顔を背ける。
私は何時間も掛けてコレなのに、千尋はものの10分くらいでこんなにカッコ良くなっちゃうんだもん。
……その姿にドキドキしちゃうのは、この私なんだけどさ。
「はぁ。意味わかんねぇな。ったく。ほら、行くぞ」
「っ!?」
一瞬だったけど、手をするりと触れられて私はビクッとしてしまった。
はっと千尋を見たけど、すでに私の前を歩き出していてその表情は見えなかった。
わざと触れたのか、偶然触れてしまったのかはわからないけど、きっと千尋は私に触れてもいつもと同じように涼しい顔をしているんだろう。
ちょっと触れただけでこんなにドキドキしてるのは私だけなんだろうなぁ。
もう、悔しい。
いつかは私も千尋をドキドキさせてみたい、なんて思ったりするけど、叶うことはないんだろうなと思う。
付き合い始めて1年半経つけど、私は未だに千尋にドキドキしまくっていて千尋はいつも余裕だなんて、何かフェアじゃない。
改めてそう思えば悔しさが大きくなって、私は千尋の後ろ姿を追い掛ける。
「部長っ」
「あ?」
「いつか絶対にギャフンって言わせますからねっ!」
「はぁ?」
予想通り涼しい顔をして私のことを見下ろしてきた千尋にそう宣戦布告すると、千尋の眉間に思いっきり深い皺が入った。
私は負けじとにこっと笑顔を向けるけど、やっぱり千尋は険しい表情をしていた。

