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「ふぅん。馬子にも衣装ってやつか?」
「!ちひ……っじゃなくて、部長!」
お姉ちゃんと喜多村さんのお色直しのタイミングで行ったトイレから戻る途中で、千尋にばったり出会った。
千尋が歩いてきた方向には喫煙所があるから、タバコを吸ってきたのだろう。
「ふーん」
「!な、何ですか?」
千尋はまじまじと私の全身を眺めていて、すごく居心地が悪く感じてしまう。
今までこんなにじっと見られたことなんてない気がするし……千尋の瞳は私の全身を突き刺すようなものなのだ。
「女は化けるもんだな。まるで別人じゃねぇか」
「えっ、それって“綺麗”って言ってくれてるの!?……っじゃなくて、言ってくれてるんですかっ?」
「アホか」
「……ですよねー。しかも、いつもはそうじゃないってことですもんね。いいですもん、別に」
呆れ返った様子の千尋の言葉と表情で、その言葉の真の意味に気付いてしまった私はぶぅと頬を膨らませた。
今日はおめでたい日なんだし、少しくらい誉めてくれてもいいのに……。
まぁでも、自分に自信があるわけでもないし、千尋から誉め言葉が出ないことはわかってるから、別にいいんだけどさ。
それに比べて千尋だ。
いつもと同じスーツ姿にも関わらず、冠婚葬祭用のスーツやネクタイだからか、いつもとは違ったカッコ良さがそこにはある。
もちろんそのカッコ良さは私を虜にしていた。

