神さまのせいでタイムスリップ先が幕末の京になりました


しかしながらも 神さまは勿体ぶりながら答える。



「 ─── ここはね、簡単に言えば あたしとしおりんが会うためだけに作られたような場所かしらね〜
さすがのあたしもそう簡単に現世に行けないから しおりんに会うためには夢の中と同じ状態の場所がちょうどいいのよね〜」



最後にウインクをして決め顔をした神さま。


何を言ってるのかやはり詩織には分からない。


きっと何度説明を聞いても理解できないだろうから放置する。



「で、神さまがわざわざこんな場所を作ってまで私に会いたかった本当の理由はなんですか?」



詩織がそう尋ねると、待ってました! というように満面の笑みを浮かべた神さま。


正直に言うと 詩織には嫌な予感しか感じない。



神さまが発する次の言葉をドキドキしながら待つ。





しかし、神さまは微笑を浮かべているだけだ。



内心首を傾げた詩織だが それでも待つ。






それでもガマンの限界というものがあり、7・8分近くも話始めない神さまにしびれを切らして口を開く。



「…私に何の用ですか?」


氷の微笑み というものを神さまに贈る。




しかし神さまはそれでも微笑んだままだ。


その上 神さまは詩織の周りをふわふわと楽しそうに浮かんで回っている。






───あっ、ダメだこれ




詩織は悟った。



神さまは詩織に何も話すつもりは無いのだと。






何度目かのため息をつく詩織。


いい加減、この訳の分からない場所から逃げてしまいたい。




だが、神さまがそれを許しはしないだろう。



その前にどうすれば目が覚めるのか詩織にはわからないのだが...





そこからは諦めモードに入った詩織。


神さま相手に 怒ったり呆れたり期待するのは無駄だと思ったからだ。


しかし、だからといって これだ!…というやりたいこともない。



勢いよくゴロゴロと横になる。





…それで詩織は気づいたのだが、この場所は無重力空間のようなものみたいだと。





その証拠に…



「た、助けて止めて神さまぁあぁぁ!!!」



ゴロゴロと回転が止まらなくなった。






壁が存在してればそれで良かったのだが それがうまいことにない模様。




どこまでもどこまでも回転が続く続く。




それを神さまは遠くから静観しているらしい。


神さまからの助けがこない。



「か…神さまぁぁぁぁあぁ」



いくら叫んでも 神さまはこない。




自分でも本当に叫んでいるのか分からなくなった詩織。





目を閉じて全てを諦めた様子。



───もうどうにでもなればいい


確かに詩織はそう思った。









(しおりん? 何かあたしに言うことがあるでしょ?)








全てを諦めたその時。



神さまの問いかけるような、怒っているような そんな声が直接詩織の頭の中に響いた。




とは言われても、残念ながら詩織には思い当たる節が全くない。




─── まさかゴロついたことが神さまの不満を買ったのか?



そんな事は無いと思いたいが それ以前は寧ろ機嫌が良かったはずだ。



それに神さまが怒る理由が他に思いつかない。




だがしかし、その元を辿れば話をし始めなかった神さまの方が悪いと詩織は思う。








『自分は何も悪くない!』



という確固たる意志を持って 無言を貫く詩織。






神さまはそんな詩織に呆れた声で続ける。


(そんな意地を張らなくてもいいのに…
あたしに謝ればいいのよ?簡単でしょ?)




どこをどうやったらそうなるのだ というセリフを神様は詩織に伝えた。










けれども、悲しいことに詩織に限界が来る方がはやかった。


神さまのセリフが聞こえたのを最後に 詩織は意識を失った。