神さまのせいでタイムスリップ先が幕末の京になりました


途端に動きが固ったみんな。


そんな中で土方は詩織に冷たい真顔をおくった。



「何故おまえが芹沢さんに行く必要がある?」


「…お世話になることには代わりはないと思って ───」


「ここにいる以上おまえは芹沢さんには世話になんねぇ」


「それは分からないでしょう!?」


「俺がいらないと言ったら いらないんだ」



会話が平行線を辿る二人を見かねて 現実へもどってきた永倉が詩織の肩に手を当てて首を振った。



それ以上 土方に何を言っても無駄だというように。





それでも納得できない詩織は スクっと立ち上がり 土方に宣言した。


「私は必ず芹沢さんに挨拶に行きますから!
……永倉さんと一緒に!!!」








「はぁぁぁぁぁぁあぁっ!?」







そんな詩織の宣言に驚きの声を上げたのは 土方ではなく当の永倉。


キッと土方に鋭い眼光で凄まれたのだが 今はそんなことは関係ない。



「俺がいつそんな約束をしたっ!?」



大声を出し焦る永倉。



「…もちろんしていませんが?」



それに対し、さも当然のように否定した詩織。



「とにかく善は急げっ!…ですよ?
早く行きましょう?」



永倉の意思などは関係なく部屋を出ていこうとする詩織。




それを



「おいおい、ちょっと待てよ!」



止まらせようと詩織の腕を引っ張った永倉。



止められたことが不満なのか ぶぅ…と頬を膨らませたのは詩織。



「なんで待たなきゃいけないんですかー?」



憎たらしい口調で詩織はぶーたれた。



「…私が思うに芹沢さんは私がここに住むことについて報告が遅れれば遅れるほど怒ると思いますよ?」



かと思えば、とたんに真面目な声を出す。




そんな詩織の言葉に



「まぁそうかもしれねぇが…」



永倉は納得する。



「それなら早く行きましょう?」



永倉の言葉を聞き終わる前に詩織は明るくそう言って 永倉の腕を強く引っ張って行った。


永倉は不意を突かれたのか 大人しく詩織に連れていかれた。




「なぁ、しんぱっつぁん連れてかれたんだけどどうすんの!?」



詩織が消えた部屋でそう声を上げたのは藤堂。




「『どうすんの!?』って言われてもなぁ…連れて行かれちまったのは仕方ねぇだろ」



頭をカシカシと掻き 呆れながら言ったのは土方。




「にしても、なんで新八を連れて行ったんだろうな」


頭を横に傾げながら不思議そうに呟いた原田。




「近くにいたからではないですかー?」


そう興味なさそうに答えるのは沖田。




「…そういうものですかね?」


沖田の意見に納得はしていない山南。




「細かいことは気にしないほうがいいだろ」


豪快にガハハッと笑ったのは近藤。




ものの見事に皆の役割が決まっている。


それが彼らが彼らである所以だろう。




こうしてひと段落したあと



「さて、明日に向けて今夜は早く寝るとするか」



近藤のこの言葉で永倉を除く浪士組幹部たちは解散した。